キーワード:永住許可、了解書、永住許可の取消し
2021年10月1日以降、永住許可申請で新たに了解書の提出が求められることになりました。そこには永住許可の取消しの文言もあります。不利益な事実を入管に伝えないまま永住許可を得たとしても、のちに永住許可の取消しという重大な結果をもたらすことが明らかにされています。また、今後、永住許可申請に限らず、ほかの申請(認定、変更、更新)にも波及していくことになるのでしょうか?
1.了解書の内容
2.在留資格の取消し制度での作為、不作為とは
⑴ 偽りその他不正の手段
「偽りその他不正の手段」とは申請人である外国人がその旨の認識をもって行う不正行為をいいます(審査要領)。具体的な行為として挙げられているのは、偽変造文書や虚偽文書の提出と提示そして虚偽の申立てです。つまり、何らかの行動を伴う作為を問題にしています。そして、行動を伴わない不作為については触れていません(第10編の2 在留資格の取消し等参照)
⑵ 不作為
前述のとおり、審査要領には、不利な事実を隠す行為や報告しないことなど不作為は具体的な行為として挙げられていませんので「偽りその他不正の手段」に不作為は含まれないという解釈も成り立つ余地がありました。
しかし、「不正行為」という文言になんらの限定がないことを強調すれば不正行為には作為、不作為も含むとの解釈も可能です。なお、東京地裁の判例には「偽りその他不正の手段」には、不利益事実の秘匿、つまり不作為も含むとしたものがあります。
3.了解書の目的は何か
⑴ 審査の対象期間の拡大を確かなものにすること
申請の一件書類に現れた事実は当然に審査の対象であり、また申請後から処分(許可あるいは不許可)がでるまでの事情の変更も含めて審査の対象となっていました。ただし、事情の変更はそれが入管に判明した場合に限られていたわけで、申請人にそれらを報告を求めることまではしていませんでした。
⑵ 不正行為には不作為も含むことを明らかにすること
しかし、了解書には、永住許可の申請後に事情変更があれば入管に連絡することを申請者に了解、周知させて、それを怠った場合には永住許可を取消すことを明記しています。
新しく提出書類とされた了解書には2つの重要な意味があります。
ア 永住許可の申請書提出から処分(許可あるいは不許可)までに起きた全事実を審査対象すにすることを明確にしたこと
イ 在留資格の取消し制度のなかで、不作為(不利益事実の秘匿)も「偽りその他不正の手段」に含まれることを明確にしたこと
4.永住許可以外の申請に波及する可能性は
これまでも、入管法上の届出義務(住所変更、所属機関の変更など)は、速やかに届けなければなりませんでした。
これに加えて、今後は、これら届出義務のほかにも了解書に書かれている事項などを入管に連絡しなければならない場合が増えるかもしれません。たとえば、在日親族や同居人について変更があったときには、在留期間更新許可申請の後であっても報告義務が課せられることなどです。
外国人を多数受入れる一方で、在留管理を緻密に行っていく方向性は今後も着実に進められていくでしょう。
参考文献:入国・在留審査要領「第10編の2 在留資格の取消し等」、了解書「出入国在留管理庁ホームページ」
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