技能実習生へのアンケート調査からみえる技能実習生の姿

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以前、技能実習生の賃金について記事を書きましたが、もっと実態を知りたいと資料を探していたところ「在留外国人に対する基礎調査報告書」を見つけました。今回はその中から、技能実習生についての部分を抜粋しました。また、蛇足を承知の上で、一部を強調文字にし、若干の私見を書いています(色の四角で囲っている部分)。

(1)回答属性について

国籍・地域別では,「ベトナム」が 59.5%で最も割合が高く,「中国」(17.3%),「フィリピン」(9.8%)となっている(図表 8)。同居者別では,「友人・知人」が 81.5%で他の在留資格と比較して割合が最も高く突出している。また,「同居している人はいない」は 13.3%で「合計」(26.0%)と比較して割合が低くなっている(図表 14)。
2019 年の世帯年収別では,200 万円未満が 89.1%となっている(図表 24)。過去1年間の母国の家族などへの仕送り(送金)をしている割合は 93.9%となっており,他の在留資格と比較して最も割合が高い(図表 27)。来日前の最終学歴別をみると,「高校」が 40.1%と「技能実習」全体の中で最も割合が高く,次いで「専門学校・短期大学」が 36.1%となっている(図表 40)。

年収が200万円未満(89.1%)であることは厚生労働省の調査と符合しています。また、技能実習の目的が「仕送り」(93.9%)であることが数字で裏付けられています。

(2)回答結果の傾向について

日本語能力について

● 話す・聞く能力では「日常生活に困らない程度に会話できる」が46.2%で「合計」(32.4%)と比較して割合が高く,「日本語での会話はほとんどできない」についても 13.3%で「合計」(12.0%)と比較して高くなっている(図表 55)。
● 読む能力については,通常の日本語では,「あまり分からない」,「分からない」の合計が 37.0%で「合計」(22.4%)と比較して高い割合であるが(図表 62),やさしい日本語では,同じ割合が 7.5%まで低下する(図表 63)。

技能実習生に文書でなにかを知らせるには、雇用する側も「やさしい日本語」を学ぶ必要がありそうです。

● 日本語の学習意欲は,「学びたい」と「機会があれば学びたい」の合計が 92.5%で「合計」(85.4%)と比較して割合が高い(図表 77)。
【日本語の学習における困りごと】
● 他の在留資格と比較して「近くに日本語教室・語学学校等がない」(27.1%),「自分のレベルに合った日本語教育が受けられない」(21.8%),「日本語を学べる場所・サービスに関する情報が少ない」(20.6%)の割合が,それぞれ最も高くなっている。他方で,日本語の学習において「特に困っていない」(18.2%)の割合は他の在留資格と比較して最も低くなっている(図表 72)。

生活上の課題について

【公的機関が発信する情報を入手する際の困りごと】
「日本で発行される母語で書かれた新聞・雑誌での情報発信が少ない」(16.8%)の割合が他の在留資格と比較して最も高い割合となっている(図表 83)。
【公的機関に相談する際の困りごと】
「どこに相談すればよいか分からなかった」(38.2%)の割合が他の在留資格と比較して最も高い割合となっている(図表 92)。
【災害時の対応に関する困りごと】
「信頼できる情報をどこから得ればよいか分からなかった」(18.5%),「日本における災害(津波など)がどういうものか分からなかった」(9.2%)の割合が,それぞれ他の在留資格と比較して最も高い割合となっている(図表 111)。

技能実習生は、他の中長期在留者にくらべると情報弱者であることが分かります。

職業生活の課題について

「給料が低い」が 50.0%と他の在留資格と比較して最も割合が高くなっている(図表 167)。
日本に来る前に得られたらよかった情報をみると,「日本での仕事の内容(就労環境)」(52.4%),「日本の会社の仕組み・慣習」(52.4%)といった仕事関係の情報での割合が「合計」(それぞれ 48.4%,47.3%)と比較して高くなっている(図表 38)。

仕事関係の情報は来日前の講習で教わっているはずですが、うまく機能していないようです。

日本人との付き合いについて

「一緒に働いている(働いていた)」(90.8%)の割合が他の在留資格と比較して最も高い一方で,「友人として付き合っている(付き合っていた)」(19.7%)の割合が他の在留資格と比較して最も低くなっている(図表 177)。

日本人と同じ職場で働きながらも、私生活での交渉はないということでしょうか。

差別的な扱いを受けた経験について
「特に経験していない」(62.4%)とする割合が他の在留資格と比較して最も高くなっている(図表 182)。差別や人権に関する相談窓口の認知状況をみると,「外国人技能実習機構(OTIT)」(41.0%)の割合が他の在留資格と比較して突出して高い傾向にある(図表187)。

技能実習生は、差別的な扱いを受けていると新聞・マスコミによって盛んに報道されています。
外国人技能実習機構(OTIT)が相談窓口となっている割合は41.0%。通報者保護の徹底および周知を図ったり、機構HPの通報受付のフォーマットを多言語化してはどうでしょうか。

今後の日本での滞在希望

● 「日本に永住したい」(29.5%),「10 年程度は日本に滞在したい」(19.1%),「5年程度は日本に滞在したい」(28.3%)となっており,長期にわたる滞在意向がみられる(図表 189)。
● 日本での滞在を希望する理由は,「今の仕事を続けたいから」とする割合が 46.6%と,他の在留資格と比較して最も高くなっている(図表 194)。

(参考)図表 167 【在留資格別】 現在の仕事の困りごと(複数回答)

図表-167-【在留資格別】-現在の仕事の困りごと(複数回答)


出典:出入国在留管理庁 在留外国人に対する基礎調査報告書  令和2年度(令和2年9月実施,令和3年2月公表)
http://www.moj.go.jp/isa/content/001341984.pdf