せっかく技術・人文知識・国際業務という専門的な在留資格を得て来日したのに、SNSで知り合った人から「もっと条件のいい仕事がある」などといわれて転職してしまう人の話を耳にします。
※ この記事は、在留資格、技術・人文知識・国際業務について書いたものです。
1.不法就労罪
ビザは種類ごとに日本でできる活動が厳格に定められています。もしこの人が技術・人文知識・国際業務ビザで定められた仕事以外に就けば不法就労罪が成立します。
「もっと条件のいい仕事がある」と誘われたとき、仕事の内容がそのビザで許容される範囲の活動かどうか、よく確認することが大切です。
もっとお金が稼げるとの単純な理由が多いのでしょうか。お金を稼ぐのは悪いことではありません。仕送りをしなければならないかもしれません。でも、違法なことはやはりマズい。
転職する外国人は「犯罪ではないし、まじめに普通に働くことの何がいけないの、違法なことはしていないのに」と考えているかもしれません。日本人でもそう考えている人は多いと思います。
しかし、入管法違反は退去強制の理由になる場合があります。
現に有しているビザで許容されていない仕事につくことは入管法違反であり不法就労罪が成立して退去強制事由となります。
2.在留資格の取消し
技術・人文知識・国際業務など、就労系のビザは本来認められている仕事を正当な理由がないのに3か月間していないことが分かると、在留資格の取消し手続が開始されます。たとえ在留期間がまだ残っていたとしてもです。
つまり、在留カードに在留期間3年と書かれていたとしても、3年間の在留が保証されてはいないのです。
入管にバレなければ取消されない、と安易に考えるのはどうでしょうか。会社は外国人が退職したことをハローワークや入管に届ける必要があります(ハローワークに対しては届ける義務)。
ハローワークは入管と連携していますので、退職したことは入管が分かる仕組みになっています。
入管は「退職から3か月経過しているのに、出国記録がない」となれば今後その外国人の動静に関心をもつことは想像できます。
警察の職務質問などをきっかけとして無職であることが分かることもあります。となれば、即、在留資格取消し手続きが開始されるリスクがあると考えておかねばなりません。
3.資格外活動許可もとれない
会社を辞めても当分はアルバイトで生活できるからと簡単に考えてはいけません。会社を自己都合で辞めていればこの許可も大変難しくなります。
技術・人文知識・国際業務は資格外活動許可をもらうのはもともと難しい資格です。勤務先の許可はあるのか、許可をとって行う仕事は資格該当性のある仕事なのか、などが審査されるからです。
留学生のようにどんなアルバイトでもできる包括許可は原則として出していません。
※ 一時的に、コロナにともなう措置で帰国困難な人に限って包括許可が出されています。
4.結局いいことはない
たしかに、「もっと条件のいい仕事がある」という話がまともなものであれば問題ありません。つまり、技術・人文知識・国際業務に該当する仕事であれば、です。
しかし、結局いいことはない、というケースもあるのです。
せっかく、正規の在留資格で3年の在留期間を認められているのに、うまい話にさそわれ危ない橋をわたり人生を誤らないようにしてください。
もう一度繰り返します。
転職する外国人は「犯罪をするわけではない、まじめに普通に働くことの何がいけないの、違法ではないのに」と考えているかもしれません。日本人とてそう考えている人も多いはずです。
しかし、不法就労は入管法に違反する行為で刑事罰の対象であり、退去強制の対象にもなります。ですので転職先の仕事が不法就労にあたるかどうかは慎重に判断しなければならないのです。
個々の事情をみれば「こうするしかなかった、かわいそう」な事案は多くありますし、私も目にしてきました。
入管法に規定がある以上、その枠内でいかに最善の選択を相談者に提示できるかが私の役目と思っています。