技術・人文知識・国際業務ビザで採用する予定だった会社が、実務研修の内容及びその期間が不適当とされてビザの変更が不許可となった事例があります。
もし、その実務研修の内容が特定技能ビザで可能ならば一旦特定技能ビザに変更し、数年後に技術・人文知識・国際業務ビザに変更する方法があります。いくつか条件がありますが、オプションのひとつとして検討の価値はあります。
まず、当事務所での事例をご紹介したあと、このオプションの手続きの流れをご説明します。
当事務所での事例
カテゴリー2の会社が、A国人を主としてA国向け営業を担当してもらう計画で採用しました。営業マンには、同社が取り扱う製品の製造知識・経験がどうしても必要だというのが会社の動かせない方針です。そこで、通算2年10か月の実務研修計画を作成しました。当該外国人は文系の専門学校を卒業しましたが、製造分野は全くの未経験です。
留学ビザから技術・人文知識・国際業務ビザへの変更不許可理由のひとつは、入社後実務研修で習得する知識・経験がその後営業マンとしての活動に必須であるとしても、専門学校での履修内容と関連性がなく、学校で習得した技能・知識を直接に生かす即戦力であるべき技術・人文知識・国際業務ビザには該当しない、というものでした。
入管が想定する実務研修は、会社内の主要な部署で「ひととおりの経験を積む」もので、実務研修で習得する知識・経験についても、その比重が大きいときは不可で、専門学校を卒業した専門士には特に履修内容との関連性が必要というわけです。(業務との関連性なら分かりますが、履修内容との関連性必要とは驚きです。)
実務研修の考え方には全く同意できませんでしたので、様々な資料を追加し、再申請を2回もしましたが結論は変わりませんでした。
ここが重要
審査官との意見交換の中で得た情報です。
もし、製造部門での実務研修が特定技能14分野に該当するならば、実務研修期間中は先ず特定技能ビザに変更し、その後、営業部門に配置転換するときに技術・人文知識・国際業務ビザに変更するという方法もあり、ということです。
つまり、会社がどうしても譲れない実務研修を、特定技能ビザで行えば何ら問題はないわけです。
実態は何ら変わりません。単に特定技能をテクニカル的に差し込むだけ、というオカシナ話です。
手続きの流れ
1.当該会社の製造部門での活動が、特定技能の製造3分野に該当するか否かの確認
・製造3分野に該当するか否かの判断を自らするのは危険です。必ず、経済産業省に確認します。
※ 経済産業省ホームページ:特定技能外国人材制度(製造3分野)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/gaikokujinzai/index.html
※ 製造3分野に限らず、分野を所管する省庁に仕事の内容が特定技能に合致するかどうかの確認をお勧めします。
2.採用予定者に技能試験を受験してもらう
・在留期間内に試験が実施されることが必要です。
試験日前に在留期限が来る場合は、雇用維持支援策を利用する方法もあります。雇用維持支援策は、特定技能1年が付与される制度ですが、次の点に注意してください。
⑴ 留学生の場合、内定取り消しが要件となっていること。
⑵ 製造3分野で利用できるのは技能実習生に限られること。
※ 出入国在留管理庁ホームページ:解雇等された外国人の方への就労継続支援のご案内
http://www.moj.go.jp/isa/content/001336423.pdf
http://www.moj.go.jp/isa/nyuukokukanri14_00008.html
・技能試験は会社でバックアップします。また、継続就労活動のための特定活動ビザの更新も必要です。そのために、試験勉強に加えて就職活動も同時に行うことが大切です。
3.特定技能試験合格を待って正式採用し、留学ビザから特定活動ビザに変更をする
4.製造部門での知識・経験を習得し終えたあと配置転換の前に、就労資格証明書を入管に申請する
・当該会社での配置転換後の活動に資格該当性があることを予め確認するための申請です。
・就労資格証明書がでなければ、配置転換を諦めるか、または、再就職先を探してもらうことになるため、時間に余裕をもって申請します。
5.技術・人文知識・国際業務ビザに変更したあとに配置転換の辞令をだす
・就労資格証明書があれば難なく変更が可能です。
特定技能をいったん挟む方法は、いろいろ応用がきくと思います。
ご参考になれば幸いです。
出入国在留管理庁ホームページ:特定技能制度ポータルページ
http://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri01_00127.html
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