本国の親と日本で暮らすための条件は審査要領に記載されています

母国にお住いの親を呼び寄せるには、次の手順で行います。

  1. 母国の日本大使館(領事館)で短期滞在ビザ(親族訪問)をとって来日してもらう
  2. 入管で在留資格を短期滞在から特定活動に変更する(ここが難関)

入管法上、いわゆる「連れ親」の活動類型は定められてはいません。そこで、このような2段階の手続きが必要になるのです。

親族訪問の目的で短期ビザをとることは簡単です。問題は、短期ビザから特定活動ビザへの変更が許可されるかどうかです。ここに絞って説明します。

1.特定活動ビザへの変更手続き

(1)許可のための要件

ア 親が高齢(65歳以上)であること

国連の世界保健機関(WHO)において、65歳以上を一般的に高齢者としてとらえていることを参考にしています。

イ 日本以外に配偶者がいないこと又はいたとしても別居状態にあり、同居が見込めないこと

離婚、死別の立証は本国の公的機関からの文書を翻訳して提出します。たとえば、中国の場合は「居民戸口簿」が必要です。(※居民戸口簿の「婚姻状況」欄は必ず確認してください。まれに死別したのに夫や妻と結婚したまま、なんてことがあります)

「別居状態にあって同居が見込めない」ことの立証は難しいですね。具体的なケースごとに入管と折衝しながら進めることをお勧めします。

ウ 日本に住む子以外に適当な扶養者がいないこと

母国に、親を扶養できる実子がいる場合は不許可となりやすいです。

実子が親を扶養できない理由として、病気であるとか、親と遠く離れて暮らしているとか、絶縁状態であるとか、理由はさまざまでしょうが、客観的な証拠にもとづいて立証できないと不許可となります。この立証も難しい点のひとつです。

エ 日本に住む子(この子の配偶者を含む)が一定の収入を得ており、かつ、納税義務を履行していること(適正な所得申告を行い非課税である場合も含む)

① 扶養者である子(この子の配偶者も含みます)の収入については、直近1年間の収入が本人を含め被扶養者(親を含みます)の人数に78万円掛けた金額以上あることが必要です。

例えば、扶養者に配偶者と子が1人ある場合で親を扶養することになった場合の人数は4人(本人、配偶者、子、親)です。78万円×4人の312万円以上が目安です。

② 扶養者に兄弟姉妹がいる場合は、これら兄弟姉妹の年収を合算して基準を超えていればよいとされます

この点について審査要領に具体的なことは書かれていません。私の推測ですが、兄弟姉妹の年収を合算する場合は、兄弟姉妹が日本に住んでいること、兄弟姉妹自身の扶養親族の人数も考慮にいれて計算するものと思われます。

(2)特別な事情のある場合の取り扱い

前記の要件の一部を満たさない場合でも以下のような特別な事情が認められれば、意見を付したうえで本省に請訓することとしています。

  • 疾病等により母国での治療が困難であり、日本において通院治療を要すること
  • 日常生活に支障をきたしており、介護を必要としていること

特別な事情は人道上の配慮からの要件です。

2.両親ともに呼び寄せることはできなくなりました

以前は、両親を呼び寄せることもできました。

しかし、今では両親二人を呼び寄せることはできなくなりました。入管内部で統一的な事務取扱をするよう通知があったことが理由だと審査官から聞いたことがあります。

3.さいごに

日本社会の少子高齢化に伴う社会保険負担の増加が問題化している昨今、説明してきたとおりの扱いが今後も継続するかは不透明です。

いわゆる老親の呼び寄せは、人道的な配慮にもとづいたものですので、この点をアピールできるように書類を整えてください。

新潟市中央区女池南2-2-10-2C

佐々木行政書士事務所