同居は婚姻関係の実体を判断する一要素にすぎないとした判例

今回は、日本人の配偶者等の資格該当性について判例(京都地裁平27.11.6、判例時報No.2303)がどのような事実に注目して別居していても婚姻に実体があるとしたか、についてご紹介します。

日本人の配偶者に役立つ判例(同居が疑われた事案)についての続報です。

【この記事のポイント】

  • 事案の概要
  • 同居は婚姻関係に実体があるか否かを判断する一要素にすぎない
  • 別居していても実体を伴った婚姻であることを基礎づけた事実とは?

事案の概要

  • 平成19年4月 X女「就学」の在留資格で来日。
  • 平成22年9月 日本人A男と結婚
  • 平成23年4月 「日本人の配偶者等」に資格変更
  •     9月 A男と離婚
  • 平成24年3月 B男と結婚
  •     5月 在留期間更新許可
  • 平成25年3月 在留期間更新許可申請
  •     7月 上記申請の内容を変更し、「特定活動」(出国準備30日)に変更許可
  •     8月 「日本人の配偶者等」に変更不許可、不法残留となり退去強制令書発布
  •     11月 取消訴訟提起

同居は婚姻関係に実体があるか否かを判断する一要素にすぎない

入管の考え方

入管は、「日本人の配偶者等」の資格該当性の判断基準を、同居と相互協力扶助を中核とする活動と捉えています。

そして、B男とX女は同居しておらず、また別居には合理的理由がないことを主な理由として、X女には「日本人の配偶者等」の在留資格該当性がないと判断しました。

京都地裁の判決

これに対して、判決では、「我が国においても、婚姻概念が多様化している今日、「同居」のみを特別扱いするのは相当ではなく、同居の有無も、婚姻関係に実体があるか否かを判断する一要素にすぎないと考えられる」とし、同居の有無を重要視する判断を退けました。

つまり、婚姻関係が実体を伴う限りにおいては、同居という特別な活動が求められることはないと判示しました。

それでは、「婚姻関係が実体を伴う」かどうかについて、裁判所はどのように判断したのでしょうか。

別居していても実体を伴った婚姻であることを基礎づけた事実とは?

ア 婚姻に至る経緯

  • X女がA男との離婚をB男に相談したことから交際が始まったという交際開始時期や交際に至る経緯につきX女とB男の供述は大部分において一致する
  • 約1か月間、毎日メールのやりとりがあり、その内容は真に愛情に基づくものや性交渉のある恋人同士でなければありえない内容である(偽装結婚であるとは到底認められない)

(カッコ内は、裁判所の評価)

イ 共同生活の実体

  • B男は週に1回程度X女のマンションに同居しており、間取り図もおおむね正確に記載している
  • B男は勤務時間や通勤費用の事情から職場の休日以外はB男の母親方に居住していた(全く不合理な選択とまでいえない)
  • B男は月に概ね10万円程度の収入であったが生活費としてX女に約10万円渡していた(X女の日常生活に係る費用は定期的にB男により賄われ、経済的に共同生活を営む実体があった)
  • 婚姻に先たち、B男はX女のマンションへ住民票を移していた(いずれは毎日同居するつもりであったとのB男の供述は信用できる)

(カッコ内は、裁判所の評価)

ウ 真摯な婚姻意思を伺わせる事情

  • 2か月間に渡り概ね毎日ラインのやりとりをしていて、その内容も実体のある夫婦でなければ送り合わない内容である(真摯な婚姻意思がなければできない)
  • ラインは入管の実地調査、事情聴取より前から行われている(ことさら自己に有利な証拠を作りだしたとは考え難い)
  • X女は不妊治療専門の婦人科医院を受診している(婚姻関係の偽装とは考え難い)
  • 不許可処分後には同居している

(カッコ内は、裁判所の評価)

まとめ

在留資格該当性の要件は、判例や申請の積み重ねによって探っていくほかありません。

そんな中、この京都地裁の判例は、「日本人の配偶者等」の資格該当性を根拠づける事実(具体的に、理由書に何を書くか)を考える際にとてもよい手掛かりになるものと考えてご紹介しました。

また、この事例は「日本人の配偶者等」を期間更新したときに入管から不許可とされたものです。しかも、1回は許可された事案です!

期間更新を安易に考えてはいけないということです。

ご参考になれば幸いです。