DVのひがいしゃが知っておくと、やくにたつ在留資格の取消し、更新、変更について

1.保護命令(ほごめいれい)

配偶者からの暴力(ぼうりょく)が「更に暴力を振るって生命又は身体に重大な危害を与える危険性が高い」場合には保護命令(ほごめいれい)を裁判所(さいばんしょ)からだしてもらえる可能性があります。単に将来暴力を振るうおそれがあるというだけでは足りません。

保護命令は、被害者(ひがいしゃ)へのつきまとい等をしてはならないことなどを、裁判所が加害者(かがいしゃ)に命令することをいいます。

DV被害者保護命令の手続きは弁護士(べんごし)に依頼してください。必要な書類はおおよそ以下の通りです。

  • 警察(けいさつ)などへの相談票の写し
  • DVを受けた経過説明、診断書(しんだんしょ)、受傷した写真など
  • 戸籍謄本など証拠書類
  • パスポート、在留カードなど

2.在留資格の取消し(とりけし)

日本人の配偶者等の在留資格は、「正当(せいとう)な理由(りゆう)」がないのに6か月以上配偶者としての活動をしていないと取り消されることがあります。たとえば、別居(べっきょ、いっしょにくらさない)などがあたります。
「正当な理由」は、DV被害者が配偶者からの暴力を理由として避難又は保護を必要としている場合などは認められる可能性があります。保護命令はこの「正当な理由」となりえます。
なお、保護命令以外でも「正当な理由」は認められます。

3.在留期間の更新(こうしん)

婚姻がすでに破綻(はたん、こわれている)しているとはいえ、婚姻関係はつづいているのであれば婚姻関係の破綻を理由として定住者への在留資格変更が認められるのはむずかしいかもしれません。
そこで、離婚調停(ちょうてい)中や離婚訴訟(さいばん)中に在留期限が過ぎる場合には在留期間の更新が必要になります。在留期間はいままでより短くなる可能性がありますが、別居の事実などを隠したりウソをついて申請することは、あらたな在留資格の取消し原因となりますので、事実をありのまま伝えて在留期間の更新をしてください。
DVが原因で別居している理由書や保護命令がでていればその写しなどの証拠(しょうこ)も提出します。

4.在留資格の変更(へんこう)

他の就労資格(技術・人文知識・国際業務、技能、経営・管理など)へ変更できる人は、離婚の成立を待つまでもなく在留資格の変更が可能です。
そうではない人は、配偶者と離婚が成立したあとに在留資格を「定住者(ていじゅうしゃ)」に変更する必要があります。変更に必要な条件(じょうけん)は次の通りです。

  • 日本において、おおむね3年以上正常な婚姻関係・家庭生活が継続していたと認められること
  • 生計を営むに足りる資産又は技能を有すること(はたらいていること)
  • 日常生活に不自由しない程度の日本の能力を有しており、通常の社会生活を営むことが困難ではないこと
  • 公的義務を履行していること又は履行が見込まれること(ぜいきん、けんこうほけん など)

日本人の実子を監護・養育する人は条件がやや緩くなります。

  • 生計を営むにたりる資産又は技能を有すること(はたらいていること)
  • 日本人との間に出生した子を監護・養育(こどもをそだてている)している人であって、次のいずれにも該当すること
    ① 日本人の実子の親権者(しんけんしゃ)であること
    ② いままで相当期間、当該実子を監護・養育していることが認められること

DV被害が原因で離婚した場合は、「定住者」への変更が許可される可能性がより高まるとされています。
DV被害の立証は、保護命令、診断書、写真、警察相談、支援措置決定通知書などで行います。


参考文献
民事渉外の実務1 293頁(新日本法規)
入管法の実務 205,453,517頁 山脇康嗣(新日本法規)
保護命令について(最高裁判所ホームページ)
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minji_hogomeirei/index.html