日本は、難民の認定率が他国と比較して低いことで知られています。しかし、難民を受け入れるかどうかは、難民条約や議定書によって一義的に決まるものではなく、受入国の方針、ひいては日本国民がどう考えるかによるものであり、またゆだねられるべき問題です。
ここでは難民問題について、認定率ではなく適正手続きの点からみてみたいと思います。難民をヨーロッパでもっとも多く受け入れているドイツと日本の難民を認定する手続きの比較です。
おおきくまとめると、日本は書面重視、ドイツはヒアリング重視の手続きといえます。
日本は書面重視
2016年4月、法務省入国管理局から出された難民認定続案内からの抜粋です。
難民申請者本人から直接ヒアリングすることは書かれていません。
また、入管法61条の2の14(事実の調査)にも、「必要のあるときは、関係人に対して出頭を求め、質問をし」とあるのみで、本人に質問するとは書かれていません。
つまり、書面重視の審査といえます。
ドイツはヒアリング重視
次に引用するのは、ベルリンのウェルカムセンターのHPに掲載されている難民認定手続きに関する記事からの抜粋です。ウェルカムセンターとは、日本でいうと各地の国際交流協会のようなものです。
亡命手続きで最も重要なのは、申請者が参加する個人ヒアリングです。聴聞会の予約時には、Bundesamt für Flüchtlinge(難民問題省)から同時通訳者が提供されます。審問では、あなたが逃亡した理由を説明する機会があります。このため、このアポイントメントに出頭する際には十分な準備が必要であり、事前に援助団体の弁護士にアドバイスを求めることが重要です。アサイラム手続きのヒアリングに関する詳細な情報は、asyl.netで多数の言語に翻訳されています。
健康上の理由やその他の重要な理由で出頭できない場合は、書面で出頭を拒否してください。正当な理由を提示せずに出頭しない場合は、申請が却下されたり、手続きが中断されることがあります。
ヒアリングは公開されませんが、弁護士、UNHCRの代理人、またはあなたが信頼する他の人が同行することができます(VwVfG第14条第4項)。同伴者のいない未成年者には、保護者が同伴します。
聴聞会では、十分な時間をとり、逃亡した理由や生活状況、自分の経歴などを説明します。また、出身国に戻った場合の危険性についての評価を述べることもできます。通常、移民・難民問題省の責任ある決定者は、あなたの出身国の一般的な状況を知っています。質問には正直に答える義務があります。写真、役所や警察からの手紙、医師の診断書など、証拠となるものをお持ちの場合は、それを提出してください。
誤りや誤解を避けるために、会話はすべて通訳され、重要な点は記録されます。話し合いの後、あなたは録音をあなたの母語に翻訳することを要求することができます。その際、お客様はご自身の発言を訂正または補足する機会を得ることができます。この逆翻訳は、録音の適合を求められる前に完了しておく必要があります。
(Asylum Process(Berlin, Welcome Center)から抜粋、翻訳:Deeplの翻訳ママ)
難民は、証拠物件をほとんどもっていないことからこのようなヒアリングが重視されていると説明されています。
認定率が問題ではなく、適正手続きが問題
難民の認定率は各国の事情(憲法規定の有無、失業率、社会保障、国民感情、社会通念など)によって高低があるのは当然です。
むしろ、問題とすべきは適正手続きが国際水準からみてどうなのかです。
すぐに答えがでる問題ではありません。課題としてストックしておこうと思います。
出典:難民認定手続案内(入国管理局 2016年4月)
http://www.moj.go.jp/isa/content/930002279.pdf
Asylum Process(Berlin, Welcome Center)
https://www.berlin.de/willkommenszentrum/en/arrival/asylum-process/
ドイツにおける難民保護と難民庇護手続法(本間 浩 P86-87)
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1000505_po_21602.pdf?contentNo=1