3回目以降の難民申請は途中でも送還できる入管法改正案の論点

入管法改正案が審議されています。その中の一つの論点について取り上げます。

論点は、つぎの2点です。
①3回目以降の申請に送還停止効を原則認めないこと
②例外として難民等に相当する資料が提出した場合は送還を停止すること

入管の主張

① 難民認定手続中の者は送還が一律停止
現在の入管法では,難民認定手続中の外国人は,申請の回数や理由等を問わず,また,重大犯罪を犯した者やテロリスト等であっても,日本から退去させることができません(送還停止効)。
外国人のごく一部ですが,そのことに着目し,難民認定申請を繰り返すことによって,日本からの退去を回避しようとする外国人が存在します。

①については,難民と認定されなかったにもかかわらず,同じような事情を主張し続けて難民認定申請を3回以上繰り返す外国人は,通常,難民として保護されるべき人には当たらない(申請時に難民と認定することが相当であることを示す資料が提出された場合を除きます。)と考えられます。
そこで,このような外国人については,今回の入管法改正法案により,送還停止効の例外として,難民認定手続中であっても日本からの強制的な退去を可能とすることとしました。

Q5 なぜ,退去を拒む外国人を退去させられないのですか?(出入国在留管理庁ホームページ)
http://www.moj.go.jp/isa/content/001345497.pdf

日弁連の主張

① 3回目以降の申請に対する送還停止効の解除について
しかし,当連合会が指摘しているとおり,日本の難民認定の状況においては,相当数の者が複数回の申請後に難民として認定されたり,人道配慮を理由に在留を許可されたりしている現状があり,このことは複数回の難民申請を行う者の中に保護されるべき者が相当数存在していることを示しているものであって ,3回目以降の申請であることを理由に送還停止効を解除することには,難民の可能性がある者を本国に送還する危険がある。

また,法案では,「難民の認定又は補完的保護対象者の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した者」を送還停止効の解除の対象から除くとされているが,このような措置は行政処分として定められておらず,これに対する救済措置が存在していないことから,適正手続の保障が存在していないという問題点を指摘せざるを得ない。送還停止効という難民条約の趣旨に合致する制度に例外を設けるのであれば,その処分性と不服申立ての手続を明示すべきであり,結局手続保障のないままに恣意的に送還が実行されるおそれを否定できない。

出入国管理及び難民認定法改正案に関する意見書、19ページより抜粋(日本弁護士連合会ホームページ)
https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/document/opinion/2021/210318_7.pdf

対立しているところ

(入管)3回以上も同じことを繰り返し主張するの者は難民等に該当しない。一部に退去を避ける目的で申請を繰り返す者がいる。

(日弁連)複数回の申請でも認定が下りている現実がある、本来認定されるべき人を見過ごしてしまう。

(入管)送還停止効が原則、例外的に3回目以降の申請には送還停止効を認めない。ただし、申請時に難民と認定することが相当であることを示す資料が提出された場合は、3回目以降であっても送還しない。

(日弁連)申請時に難民と認定することが相当であることを示す資料かどうかの判断に対して、救済する方法が規定されていない、適正な手続きとはいえない。

※ 双方の言い分は佐々木行政書士事務所の判断でまとめています。