なにゆえ「選ばれる国」になりたい

政府、産業界、おおくのマスコミが一斉に「選ばれる国」を標語にして突っ走っていますけれど、はたして大丈夫なんでしょうか。

労働力不足が第一の理由のようですがこれは一時的なものにすぎないかもしれないし(「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」野村総合研究所)、あとになって多大なコストを支払うことになりはしないか心配です。

推進派は、少子高齢化によって〇〇年後には〇〇万人の労働力不足が生じることは確実であり、労働力不足は我が国に限ったことではなく人材獲得競争がグローバルに展開されるのでこの競争に負けないためにも日本は外国人労働者に「選ばれる国」にならなければならない、というものらしいです。

慎重派は、移民とその子孫の社会統合の解決策が見いだせていない欧州が現にいま苦しんでいること、たとえば人種差別、失業、貧困、教育、宗教、経済的格差からくる社会不安や人権問題。さらに、好ましくない人々の流入にどう対応するのか、また各国間での人材獲得競争、人材育成等にかかる多大なコストが発生し続けることに対処できるのか、などです(「フランスの移民政策の現状と課題」参議院 )。

外国人の受入れで急激な人口減少、労働力不足をカバーすることはできるはずがありません(我が国における総人口の長期的推移 総務省)。推進派もまさか人口減少分をそっくり置き換えられるとは思っていないはずでしょう。とすればどうしても人口減少、労働力不足に向き合わねばならないのですから、これにどう対処するかに知恵を絞ることが大切だと思うのです。労働力をあてこんだ中途半端な受入れは百害あって一利なしです。バラ色の将来を思い描くのは自由だけれども欧州の轍は踏まないとなぜ言えるのか、よくよく考えなければならないと思うのです。

技能実習制度を廃止して育成就労制度を作り、特定技能1号から2号の分野職種と同一にすることは、これまでの就労系在留資格の基本を揺るがす激震ともいえる変化です。

さわさりながら世の中がすでに動き出している以上もう止めることはできないでしょう。ならば、せめて受入れ見込み数の決定にあたってはコンサバティブに運用されることを期待します。


参考文献
「フランスの移民政策の現状と課題」参議院
我が国における総人口の長期的推移 総務省
「日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に」野村総合研究所

コメント