料理人の資格該当性の判断のしかたをしめした判例

【この記事のポイント】

  • 在留資格「技能」の該当性はどう判断される?
  • 判決が示した基準は?
  • 従来消極的と考えられていたチャーハンやシュウマイの調理でも該当性あるとの判決
  • 熟練した技能かどうかは幅広い事実をもとに判断される

在留資格「技能」の資格該当性の判断基準

外国人が料理人として働くためには「技能」の在留資格が必要です。

そして、「技能」とは、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動」と規定されています。すこし詳しくみると、次の2点が重要です。

 

  • 産業上の特殊な分野・・・・ 外国に特有の産業分野、外国の技能レベルが我が国よりも高い産業分野、我が国において従事する熟練技能労働者が少数しか存在しない産業分野をいいます

 

  • 熟練した技能を要する業務に従事する活動・・・ 長年の修練と実務経験により身に着けた熟達した技量を必要とする業務をいいます

 

判決が示した基準は

東京地裁平成23年2月18日判決の判決文の要旨を一部ご紹介します。

事案の概要:

日本で約10年中華料理人として働いていた料理人B(技能)は、勤め先の倒産により転職を余儀なくされた。再就職先として本格的な中華料理店を希望していたが、なかなか見つからず、生活のため暫時ラーメン店Aで働いていたところ、資格外活動とされ退去強制令書が発布されたものです。

料理人Bの活動が資格外活動にあたるか?判決で考慮された事実

産業上の特殊な分野」かどうか

  • 味噌ラーメン、ちゃんぽん、皿うどん等については、遡ればその起源が中国にあり、又は中国人が考案したものである
  • しかし、その後高度に日本化されているので「産業上の特殊な分野」である中華料理の調理にはあたらない
  • もっとも、チャーハンやシュウマイは、「産業上の特殊な分野」である中華料理の調理に含まれるということができる(この点、理由は明示されていません)

熟練した技能を要する業務に従事する活動」かどうか

(A店の事情)

  • A店のオーナーは、以前中国で中華料理の修行をしたことがある
  • A店の前身は四川料理店であった
  • A店での調理のほとんどは中華鍋である四川鍋又は北京鍋を使用して行われている
  • これらからすると、(A店での)ラーメン等の調理が中華料理ではなく単純労働に過ぎないと断ずることは適切でない

(Bの技能)

  • A店主は料理人Bを採用するに当たり、チャーハンを作らせてその技量を確認し、その技能を高く評価して料理全般を任せていた。

結論

  • 料理人BのA店における調理等の活動が「技能」の在留資格に対応する活動に属しないということには、相当の疑問がある。

判例の使い方

① 「産業上の特殊な分野」についての判断

何をもって、チャーハンやシュウマイを産業上の特殊な分野であって中華料理に含まれるとしたのかは不明です。

しかし、チャーハンやシュウマイの調理が「技能」の在留資格にとって少なくとも消極的事情にはあたらないという判断は引用できます。

② 「熟練した技能を要する業務に従事する活動」についての判断

働いている店の事情も考慮にいれて判断しているのが特徴です。

料理人Bが働いていた店の前身、店のオーナー、店での調理方法、店での料理人Bの仕事内容、採用された経緯など、非常に緻密かつ幅広い事実を拾って判断しています。

これらの判断要素は、資格認定、資格更新、資格変更など様々な申請でも、「技能」に当たる活動をしていることを証明するうえで非常に参考になります。

まとめ

この判決の結論だけを取って、チャーハン、シュウマイの調理でも「技能」はOKだと早合点しないでください。

判決では、さまざまな事実を幅広く考えて結論を出しているからです。

また、それはこの裁判に関与した弁護士がこれらの事実を丹念に収集して主張した結果でもあります。

入管への申請においても、ぜひ見習いたいと思います。