不正な申請には入管法の罰則、不利益な事実を隠すのも不正に

【この記事のポイント】

  • いままでは、虚偽の申請にたいする罰則はありませんでした
  • こんごは、虚偽の申請自体が取り締まりの対象になります
  • 不正な申請をする一部の行政書士に退場を迫るきっかけになることを期待します
  • しかし、虚偽の定義はあいまいで広く解釈される可能性もあります

1.不正な申請に対する罰則の新設

ニュースでよく耳にするのは、外国人と偽装結婚した者が、虚偽の婚姻届けを提出したとして公正証書原本不実記録罪で逮捕された、というものです。

ところが昨年、「技術」の在留資格(現在は、技術・人文知識・国際業務)で入国した外国人が期間更新許可申請をしたところ、その申請内容が虚偽であることを理由に、公正証書原本不実記録未遂で逮捕された事件が報じられました。

どちらも同じ公正証書原本不実記録罪です。でも、どこが違うかといえば、偽装結婚は「戸籍」に誤った記録をさせるのに対して、このケースは、「入国管理局のシステム」に誤った記録をさせようとしたことです。

市役所への虚偽の届出という入管にとって「間接的」な行為ではなく、入管への虚偽の申請という「直接的」な行為を、法律で規制したい、というのが入管の念願でした。

虚偽申請を徹底して取り締まろうとする入管当局の意思はもともと強かったのですが、今回の法改正で在留資格等不正取得罪および営利目的在留資格等不正取得助長罪が新設されたことは、入管の虚偽申請は絶対に許さないという念願がようやく実現されたものです。

申請人本人はもとより、行政書士や弁護士、留学先・勤務先の職員など申請の取次ぎをするものは、よくよくこの条文の意味を考える必要があります。


※ 改正法施行後初の適用事例 (日経電子版 平成29年6月29日付) 虚偽の申請書で在留期間更新 容疑の行政書士ら逮捕(単純労働を継続させる目的をかくして、自らの事務所に通訳として雇ったと偽り申請した事案)


2.在留資格等不正取得罪とは

入管法70条1項  次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役若しくは禁固若しくは3百万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁固若しくは罰金を併科する。

1号(略)

2号(略)

2号の2 (在留資格等不正取得) *¹偽りその他不正の手段により、上陸の許可等を受けて本邦に上陸し、又は *²第4章第2節の規定による許可を受けた者

虚りその他不正の手段とは

故意をもって行う虚偽の申立て、不利益事実の秘匿、虚偽文書の提出等の不正行為の一切をいう(東京地平成25年12月3日)

(不正行為の一切ですので、不正が軽微であっても、また、不作為(不利な事実をあえて申告しないなど)によるものであっても、罰則の対象となる可能性があります。)

 第4章第2節には、在留資格の変更、在留期間の更新、永住許可、在留資格の取得、在留資格の取消しなどの規定があり、これらの申請も対象になります。

つまり、この条文の射程は広く、すべての申請・届出に適用されます。

なお、この条文による申請の萎縮効果を懸念する意見もあるようですが、私はそうは思いません。むしろ、グレーな申請や在留が減ることに期待しています。

この罪が成立するのは以下の場合です。

  1. 故意に
  2. 虚偽の事実を申立てること
  3. 申請に不利益な事実を隠すこと
  4. 虚偽の内容の文書を提出すること

くれぐれも気を付けてください。

3.営利目的在留資格等不正取得助長罪とは

入管法第74条の6  営利の目的で第70条第1項第1号若しくは第2号に規定する行為(以下「不法入国等」という。)又は同項第2号の2に規定する行為の実行を容易にした者は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

この罪が成立するのは以下の場合です。

営利目的で、在留資格の不正取得を容易にしたこと

これにより、申請を受任した行政書士や弁護士さらにその他の申請取次者も処罰対象になりました。

4.まとめ

この法改正で虚偽の申請を行えば、本人はもちろんのこと行政書士など申請を取り次いだ者も刑罰の対象になります。

2017年12月5日放送のクローズアップ現代+では、ベトナムからの留学生を食い物にする斡旋業者、日本語学校、企業などの実体が報道されていました。この法律で不適切な申請をする連中を排除しましょう。

この法改正を私たちにに向けられたものと真摯にうけとめて襟を正し、外国人を食い物にする連中に厳しい態度で臨むことがあるべき道であると信じます。

申請人や申請にかかわる行政書士、弁護士などにとっては、今後なお一層、事実確認を徹底する、提出書類の内容の確認を徹底することが、強く求められていることを肝に銘じなければなりません。

平成29年12月6日改訂

令和3年3月31日改訂

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