不法就労助長とみされないための3つの防御策

【この記事のポイント】

  • 雇用した外国人が不法滞在(就労)だと知らなかったとしても処罰される可能性があります
  • 不法就労助長罪とされないための3つの手順を説明します
  • 雇用主に不法就労助長罪が成立する典型例を説明します

1.はじめに

外国人が不法就労罪で摘発されたとのニュースを耳にされた方も多いことと思います。

そして、雇っていた外国人が逮捕されると雇い主のあなたも不法就労助長罪として処罰の対象となることをご存じでしょうか?

今回は、外国人を雇用したあなたが、ある日突然、不法就労助長罪に問われないため、外国人を雇い入れるときに注意していただきたいことを書きます。

2.どのような処罰になるのか

1.不法就労助長罪(入管法73条の2)・・・不法就労させたり、不法就労をあっせんした者・・・3年以下の懲役・300万円以下の罰金(雇用主が外国人であれば退去強制の対象になります)

2.外国人の雇用状況不届出または虚偽の届出(雇用対策法28条、38条第2項)・・・外国人の雇用または離職についてハローワークに届出をせず、または虚偽の届け出を行った事業主・・・30万円以下の罰金

3.たとえ「知らなかった」としても処罰され得る

不法就労助長罪は、不法就労の外国人を雇用することで成立します。

雇用した外国人が不法就労にあたることを、たとえ「知らなかった」としても、在留カードを確認していないなどの過失がある場合には、処罰を免れることはできません。とても厳しい法律です。

処罰を免れるためには、「知らなかった」ことに「過失がない」ことを立証しなければなりません。

4.不法就労助長とされないための3つの防御策 ~「過失がない」ことの立証~

あなたが雇用した外国人が不法就労であったとしても、もし、それを知らなかったことに「過失がない」場合には、不法就労助長罪は成立しません。

「過失がない」とは、あなたが、不法就労かどうかを確認するためにやるべきことをきちんとやっていたかどうかによります。

不法就労かどうかの確認にあたって、尽くすべき手段をすべて尽くしていれば「過失がない」と評価され得ます。

そこで、「過失がない」とされるためには、下記の3つのことをしておけば安心です。

① 在留カード(およびパスポート)の記載内容をコピーではなく原本で確認

② 在留カード等番号失効情報照会を利用して偽変造や失効の有無を確認(入管のHPで確認できます)

最新版!! 在留カード等読取アプリケーション サポートページ
出入国在留管理庁が無償で提供しているアプリです

http://www.moj.go.jp/isa/policies/policies/rcc-support.html

記事「偽変造された在留カードを見分ける無料アプリを入管がリリースしました」
当ブログのページです。
https://visa-niigata.com/gizo-card/

③ 「就労資格証明書」を提出してもらう(在留カードの偽変造を見抜くため)

以上のことをしていれば、雇用主のあなたの身は守れます。①と②さえしていれば十分と思いますが、在留カードの偽変造が心配な方は念のため③までやっておけば安心です。

不法就労とは直接関係がありませんが、外国人を雇った、あるいは、外国人が離職した場合には、ハローワークへの届け出も必ず行ってください。これを怠ると罰金の対象になります。

ご参考

● 入国管理局の「外国人を雇用する事業主の皆様へ」のパンフレット

● 在留カードの確認を行っていれば問題ないとする理由は以下の通りです。「在留カードは適法に在留する中長期在留者に対してのみ交付され(不法滞在者には交付されない。)在留資格の種類、就労制限の有無、資格外活動許可事実等が記載されるものであるから、在留カードを確認すれば就労の可否等が容易に分かるはずである。したがって、実際には、在留カードの確認を行ったか否かが重要なポイントとなる(出入国管理及び難民認定法 逐条解説 改訂第四版 P1003)

5.雇用主に不法就労助長罪が成立する典型例

1.認められた範囲をこえて働くケース

〇 資格外活動許可を受けていない留学生や家族滞在者を働かせること、また、許可を受けた範囲をこえて働かせること

〇 通訳として働くことを認められたのに、飲食店でウェイターとして働らかせること(当初からウェイターとして働かせる目的で通訳として雇用すると偽った場合には、営利目的在留資格不正取得罪が成立し得ます)このように、在留資格で認められた活動以外は行ってはなりません。

永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者には就労制限はありません。

2.就労が認められていないのに働くケース

  • 留学生や家族滞在者が許可を受けないでアルバイトをすること
  • 観光・知人訪問目的で来日した人が働くこと
  • 資格外活動の許可を受けていた留学生であっても、学校を除籍になって3か月以上経過し、在留資格取消手続きが開始されている場合には、資格外活動許可も取り消され得ますので注意が必要です。

3.日本に滞在することがそもそも不法である場合

  • 雇い入れた外国人が、不法残留者(いわゆるオーバーステイ)、不法入国者にあたる場合

以上が雇用主に不法就労助長罪が成立する典型例です。

なお、留学生が許可を受けていても週28時間をこえて働いていたことが後に判明すると、せっかく内定を受けていても就職ができないことがあります。また、最悪のケースでは退去強制されることさえあります。

雇用主の方々には将来のある若い留学生のこともよくよく考えて、時間厳守(週28時間)をお願いします。

6.まとめ

不法就労外国人を雇用すると、雇用主も罪に問われます。

そうならないためにも、在留カードはその記載内容のみならず偽造変造や失効についても慎重な確認をしてください。

ご参考になれば幸いです。

2017年3月29日改訂

2017年12月5日改訂

新潟市中央区女池南2-2-10-2C 佐々木行政書士事務所

SASAKI KEI

入国在留コンサルタント

090-2640-4204