改正入管法見送りで、在留特別許可申請の明文化もなくなりました。

現行、在留特別許可は「法務大臣の裁決の特例」として運用され、申請権ではないと説明されている。しかし改正案は、在留特別許可申請を申請権として明文化した。

改正案では「当該外国人からの申請により」の文言が加わり、在留特別許可申請が明文化された。

(5月18日追記)
政府・与党が入管法改正案の成立を見送ると、報道されました(5月18日)。実は、これによって難民申請中の人の在留特別許可を申請する可能性も同時になくなってしまいました。

在留特別許可を願いでること現行法では退去強制手続きの中でしかできません。独立した申請権ではないからです。もし、改正法で独立した申請権として認められたとしたら、退去強制手続きではない場面、つまり難民申請中であっても在留特別許可を申請することができたのです。

具体的には、難民申請中に日本人と結婚し、日本に10年以上暮らしている人は難民申請を繰り返すよりも、在留特別許可を得て「日本人の配偶者等」の資格を得られる可能性が高いです。いまのままでは、働くこともできない。こんな状態が今後も延々と続くのでしょうか。

では、具体的に一体何が変わるのだろう。

「在留を特別に許可することができる」外国人の例として「四 難民の認定又は補完的保護対象者の認定を受けているとき。」(改正案第50条1項4号)が追加されている。

第五十条(改正案)
法務大臣は、外国人が退去強制対象者に該当する場合であつても、次の各号のいずれかに該当するときは、当該外国人からの申請により又は職権で、法務省令で定めるところにより、当該外国人の在留を特別に許可することができる。(中略)

一 永住許可を受けているとき。
二 かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
三 人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
四 第六十一条の二第一項に規定する難民の認定又は同条第二項に規定する補完的保護対象者の認定を受けているとき。
五 その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき

この部分の改正に限っていえば、実務を大きく変えるものではなさそうだ。

① 在留特別許可申請が明文化されたことと、在留が特別に許可されやすくなるかといった運用の話は別である、
② 在留特別許可の許否は、実務上「五 その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき」の審査が大多数を占めているので4号が追加されても影響は小さい、というのが理由だ。

また、これまでも、難民認定されれば日本にそのまま居住できるのであるから、外国人からみれば実際上変化はない。

(5月18日追記)
しかし、冒頭に書いたように、在留特別許可が独立の申請権となるならば、たとえ補完的保護対象者の認定を受けていなくても、難民申請中の人は第五号によって日本人と婚姻関係にあれば日本人配偶者等の在留資格を得る可能性はあったのです。

在留特別許可の対象に補完的保護対象者が追加されたことが実務に影響のある改正といえる。

ただし、新たに追加された「難民および補完的保護対象者」は、あくまで難民認定制度の話だ。

つまり、在留特別許可が申請件として明文化されたことは結構なことではあるが、それよりも、補完的保護対象者とはどんな人?に焦点を当てることが実務上は重要だ。

補完的保護対象者については、次回で触れます。

新しい補完的保護対象者とはどのような人をいうでしょうか
https://visa-niigata.com/hokannteki-hogo4473/

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