5月21日に出入国在留管理庁から令和2年の「在留資格取消件数」が公表され、報道各社も伝えました。
しかし、各社の報道は単に公表数字を伝えるのみで重大な変化を報道していません。
重大な変化とは、2016年の入管法改正で新たに追加された取消事由による在留資格の取消し件数が最多になったことです。
これは入管が適正な在留管理に本腰をいれて改正法の運用をしていることを示しています。
このグラフは、最も多い取消事由2つによる取消件数を時系列で表したものです。(5号、6号については次の説明をお読みください。)
取消事由
5号・・・入管法別表第1の在留資格をもって在留する者が,正当な理由なく在留資格に応じた活動を行っておらず,かつ,他の活動を行い又は行おうとして在留していること(2016年改正により追加)
6号・・・入管法別表第1の在留資格をもって在留する者が,正当な理由なく在留資格に応じた活動を3月(高度専門職は6月)以上行わないで在留していること
6号は、取消の要件が数字で明確になっているのに対し、5号は規範的要件、つまり事実の評価を根拠にしている点が大きくことなります。
5号が新しく追加されたときも要件のあいまいさを指摘する声が多く、実際の運用が危惧されていました。
とくに「行おうとして」とはどういう事実を指すのか、今回発表された具体例からは読み取れません。
とはいえ、今回の発表で、改正後わずか4年目で取消事由のトップになったことは入管の適正な在留管理への積極的、厳格な運用をする意思を明らかにしたものとみてよいでしょう。
上のグラフは、「技能実習」と「留学」がターゲットとして在留資格の取消しが行われたことを示しています。技能実習は1号ロ、2号ロ合計で544件、留学は524件でした。
ちなみに、「技術・人文知識・国際業務」は29件(2.4%)、「日本人の配偶者等」は28件(2.4%)でした。
それでは、公表された5号と6号の具体的な取消し例を見てみましょう。
最後に全体の在留資格の取消し件数をご覧ください。
入管の適正な在留管理への厳格な姿勢が分かります。今後もこの傾向は続くものと思われます。
令和4(2022)年の在留資格取消件数は1,125件でした。これは令和3(2021)年の800件と比べると40. 6%の増加となっています。
在留資格別にみると、「技能実習」が901件(80. 1%)と最も多く、次いで、「留学」が163件(14. 5%)、「技術・人文知識・国際業務」が23件(2%)となっています。
国籍・地域別にみると、ベトナムが804件(71. 5%)と最も多く、次いで、中国(注1)が146件(13%)、カンボジアが53件(4. 7%)となっています。
出入国管理及び難民認定法第22条の4第1項各号の取消事由別にみると、第6号が917件(81. 5%)と最も多く、次いで、第5号が161件(14. 3%)、第2号が28件(2. 5%)となっています。
出典:出入国在留管理庁ホームページ
令和2年の「在留資格取消件数」について
http://www.moj.go.jp/isa/content/001348061.pdf