在留特別許可|内縁関係を保護する方向に変わる!?

「在留特別許可に係るガイドライン」が入国管理局により設定公表されていますが、近時、このガイドラインの見直しを迫るような判決が2つでています。

今回は、裁判により在留特別許可をすべきとされた2つの判例についてご紹介します。

【この記事のポイント】

  • 在留特別許可すべきとされた2つの判例の事案
  • 在留特別許可に係るガイドラインの記述
  • ガイドラインは見直されるか

在留特別許可をすべきとされた2つの判例の事案

事案 1

正規の在留資格を得て入国したフィリピン国籍の女性Xが、本邦に在留中永住者の在留資格を有するAとの間の子を妊娠。日本にとどまって子を育てたいと考え、在留期間を超え不法残留となった。Aは本国(フィリピン)に妻がいたが、相手の協力が得られず離婚はしていない。子はXの退去強制に係る裁決時8歳であった。XとAは8年余りの間、同居しており、事実上夫婦として生活をともにしていた。(東京地裁 平成23年4月15日判決)

事案 2

正規の在留資格を持つブラジル国籍の男性Yが、無免許運転でひき逃げ事件を起こし、出頭すべきかどうか迷っていた間に在留期限を徒過し不法残留となった。Yには、フィリピン人女性Bとの間に3人の子どもがいる。YとBに法的な婚姻関係はなく、内縁状態であった。(名古屋高裁 平成28年11月30日判決)

在留特別許可に係るガイドラインの記述

在留特別許可に係るガイドラインとは

在留特別許可に係るガイドラインとは、退去強制手続きの中で、法務大臣が個々の事案を判断するうえでどのような事情を積極要素(許可を与える方向の事情)、消極要素(許可を与えない方向の事情)として考慮するかについて書かれたものです。

法務省入国管理局が平成21年7月に改訂・公表しています。

外国人夫婦の一方に退去強制手続が開始された場合

このガイドラインの中で、外国人夫婦の一方に退去強制手続が開始された場合の検討項目は以下のとおりです。

  1. 他の外国人配偶者との婚姻が法的に成立していること
  2. 夫婦として相当期間共同生活をし,相互に協力して扶助していること
  3. 夫婦の間に子がいるなど,婚姻が安定かつ成熟していること

これらは、特別在留許可を与える方向での事情として斟酌されます。

これを文言のとおり解釈すると、内縁関係にある外国人夫婦は要件を満たさないことになり、家族関係に関する積極要素は「なし」となってしまいます。

2  その他の積極要素

(2) 当該外国人が,別表第二に掲げる在留資格(注参照)で在留している者と婚 姻が法的に成立している場合であって,前記1の(3)のア及びイに該当する こと

「在留特別許可に係るガイドライン」より

 

前記1の(3)のア及びイ

1 特に考慮する積極要素

(3)当該外国人が,日本人又は特別永住者と婚姻が法的に成立している場合(退 去強制を免れるために,婚姻を仮装し,又は形式的な婚姻届を提出した場合を 除く。)であって,次のいずれにも該当すること

夫婦として相当期間共同生活をし,相互に協力して扶助していること

夫婦の間に子がいるなど,婚姻が安定かつ成熟していること

「在留特別許可に係るガイドライン」より

法務大臣の自由裁量

入管の考え方

「在留特別許可を与えるかどうかは、法務大臣の自由裁量に委ねられている。よって、法務大臣が在留特別許可を与えなかったことについて、当・不当の問題が論じられることはともかく、違法の問題が生じることはあり得ない。」(出入国管理及び難民認定法 逐条解説 改訂第4版 699頁)

入管の考えもこれにほぼ沿ったものと思われます。

裁判所の考え方

「法務大臣の裁量権の内容は全く無制約のものではなく、その判断が全く事実の基礎を欠き、又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合には、法務大臣のした裁決は、その裁量権の範囲を逸脱し、又は濫用したものとして、違法になるものと解される。」

これは、判決文によく現れる常套句です。

ガイドラインは見直されるか

平成23年東京地裁判決では、「このような(夫婦と子の三人の)家族関係は、在留特別許可の許否を判断するについて、積極的要素として十分に考慮すべきものである」としています。

そして、その後の平成28年名古屋高裁判決でも、内縁関係を積極的要素としたかのような表現「一家離散を招きかねず、人道に著しく反する」が用いられています。

このように、司法の判断には寛大なものもでてはいますが、法的な婚姻関係が必要だとの行政見解を変更するには時間がかかるものと思われます。

事実、平成23年東京地裁判決のあとも、平成28年名古屋高裁判決の事案で入管は退去強制とすべきと判断していることから、内縁関係を認めないとする行政見解に変化はないとみて間違いありません。

まとめ

当面、特別在留許可に係るガイドラインが改訂される可能性は低いと思います。

したがって、これらの判例だけを頼りに入管への出頭をするのにはそれなりの覚悟が必要です。

ただ、不法残留はいつか清算すべきです。一旦帰国して再び来日する可能性を探ることも考えてください。

ご参考になれば幸いです。